「虚構戦記研究読本 兵器・戦略篇」


 今回紹介する本は「虚構戦記研究読本 兵器・戦略篇」(著者:北村賢志 出版社:光人社)でござる。
 この本が素晴らしいのは、太平洋戦争における歴史のIFを非常に論理的かつ合理的に検証しているところだ。
 そこには身贔屓も無ければ「非難のための非難」もない。(ある論理に対して別の論理を持ち出すという詭弁の手法は用いられているが)

 細かい部分では文句を言いたくなるような部分はある。
 例えば、核爆弾の米艦隊への使用は効果を期待できないとか、日本軍が例え自動小銃を装備できたとしても無意味だとかいう部分。
 拙者にしてみると、戦艦長門が核実験で沈まなかったのは標的艦の中で長門が並外れて頑丈であったからで、当時の米艦隊の至近で核爆弾が使用されれば開放型の米空母はひとたまりもなかっただろうとか、ガダルカナルで日本軍が自動小銃を装備できていれば戦局はもっとましになっただろうとかの不満が湧き上がってくる。
 しかしながらこれらの不満は、当時の日本軍が核爆弾を使用できる可能性も大戦早期に自動小銃を装備できる可能性も皆無なので、事実上まったく問題にならない。
 他にもノモンハン事件など史料の流出で近年に歴史考証に大きな変化があったものなどに関する記述にも問題があるが、出版時期を考えれば仕方あるまい。
 真珠湾に関しては、拙者は各種史料から米国首脳は知っていたと確信しているので見解が分かれるところだ。
 全般的に漂うバイアスのかかりぐあいに胡散臭いものを感じるものの、論理の組み立て方自体を批判する気は無い。この本に書いてあるようなことも、物の一つの見方というものだ。

 本書の内容の「戦略篇」と「考察・日本の敗因」は近代日本史を良く知らない方(現代日本人の多くがそうなのは悲しいことでござる)には是非御一読されることをお勧めする。
 多くの現代にも通用する教訓を含んでおるからだ。
 たかだか六十年ほど昔の戦争に対する検証が多くの教訓を含んでいるということは、日本人があれだけ悲惨な敗戦からでさえ学んでいないことを如実に示すことであり、拙者は情けないものを感じる。
 しかし、今からでも真摯に歴史に学ぶことで、人は将来に対してより良い選択ができるようになれるものと拙者は信ずる。

 姉妹篇である「戦術・作戦篇」もお勧めでござる。

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