「真珠湾の真実」


 今回紹介する本は「真珠湾の真実」(著者:ロバート・B.スティネット 出版社:文芸春秋 価格: 2,000円)でござる。
 これはよくある「日本を真珠湾奇襲に誘導した米国の謀略」を扱った本。
 検索ワードに「真珠湾 ルーズベルト」を指定して検索すればこの手の本はいくらでも見つかるが、拙者は特にこの本をお勧めする。
 何故ならば多くのこの手の本が状況証拠と推論の積み重ねに過ぎぬのに対して、この本は「情報の自由法によって開示された公文書」という決定的証拠をもって米国の謀略が解説されておるからだ。

 この本から拙者が要点を選び出すとすればこうなる。

・米国が日本を対米開戦するように各種手段で追い込んだこと。
・日本軍の暗号が開戦前に既に解読されていたこと。
・それにより日本側の情報は筒抜けであったこと。
・無線封鎖神話がまったくの虚構であり、真珠湾を奇襲した艦隊は頻繁に無線連絡をとっていたこと。
・それにより米軍は日本艦隊の位置とその意図を把握していたこと。
・「日本軍の真珠湾奇襲」は米軍が正常に機能していれば有り得なかったこと。
・数々の疑問点解決や当時のハワイ防衛責任者の名誉回復のために何度も繰り返された「真珠湾調査」全てが茶番に過ぎなかったこと。

 明らかに日本は米国にはめられたというわけだな。
 だからといって拙者は米国を責める気はない。
 むしろ、こういう事実を持って「日本は米国に騙された哀れな被害者」とするのはお門違いと思っておる。
 生き死にをかけた戦いには卑怯もへったくれもない。勝つためには手段を選ばぬものだ。
 それより我々は歴史から学ぶべきでござる。国際社会は騙される方が悪い弱肉強食の世界であること。様々な国が国家戦略遂行のためにこのような謀略を用いてくること。
 普通に考えれば騙す方が悪いのは当然であるが、それが通用するかどうかは相手次第。
 国際社会ではそういう道理は通じぬものと考えた方が良い。
 日本は開国して以来、そういう国際社会の中で生き残るための戦いを挑んでおったわけだが力及ばずその戦いに敗れたというわけでござるな。

 およそ戦いには「力の戦い」と「知恵の戦い」がある。
 日本は「力の戦い」においてこてんぱんに負けたわけでござるが、拙者に言わせれば日本はその「力の戦い」以前に「知恵の戦い」に負けておったというわけでござる。
 このことはある教訓を示してくれる。
 ある国が戦争を避けたいのなら、あるいは避けられぬにしてもせめて戦争を有利に進めたいのであれば、知恵をつけねばならぬということだ。

 それにしても()に恐ろしきは権力というもの。
 国家戦略の実現にあたって、
・人事権を握り計画遂行の上で邪魔になる人物は配置転換し、
・配下の人間を要所に配置することで、情報の流れを握り、
・数々の通信員や暗号解読員が日本軍の真珠湾奇襲を予め知っていたというのに多数の人に緘口令を徹底し、
・多くの証拠に対して隠滅工作を行い、
・数々の事前情報を握り潰し日本軍の真珠湾奇襲を成功させ、
戦後六十年近くにわたって事実を隠しつづけてきたわけでござるからな。
 これは海の向こうの国だけの問題ではない。
 平和を護りたいのであれば、国民の一人一人がこうした権力の動きを監視せねばならぬし、監視と規制を行うための仕組みを作ることも必要でござるな。

 かの戦争の理由であるが、米国の文書に残された「日本を挑発して戦争を引き起こす理由」は「独逸の侵略に脅かされている英国を救うため」でござった。
 当時の状況では直接独逸に宣戦布告できなかったので、日独伊三国同盟を利用して日本と戦争状態になることで独逸に対して参戦する裏口を作ったということでござるな。
 それが真意かどうかは判らぬが、「公式」には彼らにとっては「日本を挑発して対米戦争に引きずり込む」ことも「真珠湾で失われた自国民の人命」も同盟国を救うという「彼らにとってより大きな正義」を為すための「必要悪」であったというわけでござる。
 なるほど、一応の事情は解るが随分と自分勝手な話でござるな。
 そもそも、第一次世界大戦の敗戦でぼろぼろだった独逸があれだけの侵略を行えたのは、米国が復興を後押しして軍事大国に育て上げたからであるからして、いうなれば米国の自業自得。
 というわけでだ。戦争を防ぎたいのであれば、こういう身勝手を力でごり押ししてくることを許さない国際秩序の構築が不可欠であるということであるな。

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