合わせ目、ヒケ、傷などの処理

合わせ目の処理

 何かと初心者の関門とされがちな合わせ目の処理ですが、何も難しいことはありません。
 接着時に押し出された樹脂とパーツ接着面の段差を削り落とすというだけのことです。(段差が大きすぎるときは、ヒケなどの処理と同じようにパテなどを盛ってから表面を整える必要がありますが)

(以下の画像で合わせ目が黒いのは、予めパーツ内部に黒を塗装していて、接着時に接着面に付着していた塗料が接着剤で溶け、圧着した際に溶けたプラスチックと供に押し出されたためです。)

削って やする

 まずは粗削り。
 アートナイフの刃を立て横に滑らせることで鉋(かんな)のようにして削るなり、やすりで削るなりして、接着面からはみ出した樹脂と段差を大まかに削りとります。

紙やすり使用

 そして400番程度の目の紙やすりで磨いて粗削りの際の傷を削り落とします。
 この際、耐水紙やすりで水研ぎをすると粉塵が飛び散るのを防げます。
 画像では耐水紙やすりを四つ折りして使っていますが、きちんと平面を出したりエッジを立てたりする場合は、適当なサイズのプラ板などに紙やすりを貼りつけて(当て木して)磨きます。
 塗装する前はもっと目の細かい紙やすりで磨いてやる必要がありますが、サーフェーサーを吹く前の処理としてはこの程度で十分です。

ヒケ、傷などの処理に使う素材

 こういった用途に使える素材は色々ありますが、私が良く使う素材を紹介します。

もっぱら浅いヒケや傷の処理に用いている素材

素材

 画像左上はホルツのナイフィングストッパー(カー用品店で購入)、画像左下はタミヤパテ、画像右はGSIクレオスのサーフェーサー500。

 ナイフィングストッパーもタミヤパテも溶剤の揮発によって硬化する一液性のパテ。硬化時にヒケるので厚く盛る用途には向きませんが、ちょっとしたヒケや傷の処理には便利です。
 どちらも用途は同じですが、ナイフィングストッパーはチューブから出したそのままでヒケや傷に擦り込み、タミヤパテはラッカーシンナーで薄めて溶きパテにして使うというように私は使い分けています。
 これはナイフィングストッパーがヘラなどで擦り込むときの伸びが良いということもありますが、二種類の色の異なる素材を併用することで、削りすぎによる二度手間を省くということが主目的です。

 サーフェーサー500はそのまま溶きパテとして使えます。

深いヒケや傷を処理する際や作業を急ぐ際に用いている素材

素材

 画像左はアルテコの瞬間接着パテ、画像中央は低粘度・中粘度・ゼリー状の瞬間接着剤、画像右は瞬間接着剤硬化促進剤のインスタセット。

 瞬間接着パテはヒケず硬化時間も短く素材への食いつきもいいのでヒケや傷を埋めたりちょっとした形状変更を行うにはもってこいの素材です。
 瞬間接着剤は接着用途以外にヒケや傷を埋める際のパテ代わりの素材としても使えます。
 低粘度の瞬間接着剤は筋彫りを埋める際に、中粘度・ゼリー状の瞬間接着剤はヒケや傷を埋める際に硬化促進剤と併用して使用しています。

ヒケや傷を埋める際の素材の種類による個人的評価

素材種類硬化時間切削性ヒケ難さ利便性
一液性のパテ×
瞬間接着パテ×
瞬間接着剤
瞬間接着剤+硬化促進剤
ポリパテ×
光硬化パテ

 硬化時間に関しては吹きつけた途端に即座に硬化する瞬間接着剤+硬化促進剤を◎としています。ポリパテと瞬間接着パテ(瞬着の硬化促進剤を使用することにより硬化時間短縮可能)は数分間の硬化時間を待たないとならないので○。一液性のパテはそれ相応の時間が必要ですし、瞬間接着剤は盛りつけ用途では硬化するまで時間がかかるので△としています。
 切削性(削りやすさ)に関しては非常に加工しやすい瞬間接着パテを◎。銘柄によってはそれなりに加工しやすい一液性のパテとポリパテを○。硬くて加工しづらい瞬間接着剤と瞬間接着剤+硬化促進剤を△としています。
 ヒケ難さはヒケてしまう一液性のパテを×。あとの素材はヒケないので◎としています。ただし、ポリパテは僅かにヒケるので○とします。
 利便性は出してそのまま使えるということで一液性のパテと瞬間接着剤を◎。瞬間接着剤を塗った後に硬化促進剤をスプレーするだけの瞬間接着剤+硬化促進剤を○。二剤を混ぜ合わせる必要がある瞬間接着パテとポリパテを×としています。

 ヒケ、傷などの処理においては、これらの素材を用途によって使い分けるわけですが、私はもっぱら瞬間接着剤と硬化促進剤を使っています。
 これらの素材の使い分けですが、

といったように使い分けると作業の効率が良いでしょう。

タミヤから発売された光硬化パテに関する追記

 2004年11月にタミヤから発売された光硬化パテですが、かなり使える素材です。
 評価ですが、蛍光灯の光で二分程度で硬化させることが可能なので硬化時間は○、切削性に関してはやや脆く感じられるものの概ね良好なので○、ヒケ難さに関してはほとんどヒケないので○、利便性に関してはチューブから出してそのまま使えますが脱脂の手間があるので○としています。
 欠点は35gで1200円という価格と光による硬化の関係で2ミリ以上厚く盛れないことと表面の油膜でしょうか。
 しかしながら、価格に関しては瞬間接着剤が2gから5gで100円することを考えれば、十分に他の素材との価格競争力を持つものといえるでしょう。
 厚く盛れないのも、光硬化パテをヒケ穴・突き出しピン跡・気泡などの小さいながらプラパテで埋めるには深すぎる窪みを埋める補助材料と考えれば問題ありません。
 硬化後に表面の油分をアルコールやシンナーで拭き取る手間がいるのが残念なところです。

4.ヒケ、傷などの処理の実際

 実際の処理のサンプルです。画像はパーツに空いた穴を埋める様子のものですが、ヒケや傷の処理においてもやることは同じです。

盛り付け

 まず埋める箇所に多めに素材を盛りつけます。画像ではゼリー状瞬間接着剤を盛った上で硬化促進剤を吹きつけています。(盛りつける際に気泡を入れてしまった悪い例でもあります。痛た…)

削り落とし

 その後、合わせ目の処理のときと同様に、やすりで余分に盛りつけた素材を削り落とします。

5.細かい傷の処理の実際

 溶きパテを用いた細かい傷の処理のサンプルです。

溶きパテ

 画像右上の塗料皿の中身はタミヤパテをGSIクレオスのうすめ液で溶いた溶きパテです。
 これを筆で、やすりによってできた傷や合わせ目周辺の窪みに塗りつけたのが画像右下の模型部品。
 同様に処理した模型部品を紙やすりで磨いたのが画像左下。
(画像左上は溶きパテを塗るのに使用した筆を洗うための筆洗い)

 溶きパテを塗ると、細かい傷や窪みを埋めることができるだけでなく、パーツの表面の状態も確認しやすくなります。粗削りした際や改造した際の状態確認に便利です。

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